1800mの札幌2歳Sを制したサンディエゴシチーは、今年の3歳世代が大ブレークしたマンハッタンカフェ産駒で、まだ奥がありそう。新潟と小倉の覇者はいずれも牝馬だったが、仕上がりの早さだけで他馬に先んじた印象はなく、新潟の勝ち馬シンメイフジ(父フジキセキ)も、デュランダルの初年度産駒となる小倉の勝ち馬ジュエルオブナイルも、大きなところを狙えそうな器と見る。各地の2歳Sがいずれも将来に繋がりそうな結果となったことで、今後のこの世代の戦いぶりが益々興味深くなったと言えそうだ。
海の向こうでも、2歳戦が真っ盛りである。 9月1週目の週末にはアメリカでも、サラトガでホープフルSとスピナウェイS、デルマーでデルマーフューチュリティとデビュータントSという、2歳世代の牡馬・牝馬にとって最も早い時期に組まれたG1が、東西両海岸で施行されている。
ダーレーが冠スポンサーとなって5日にデルマーで行われた牝馬のG1デビュータントS(7f)を制したのは、ミスーノ(父プルピット)。母が、G1アッシュランドSに勝っているマッドキャップエスカペイドという良血で、自身も当歳時にキーンランド・ノベンバーにて170万ドルで購買されている期待馬である。
6日にサラトガで行われた牝馬のG1スピナウェイS(7f)を制したのは、今年3月にフロリダで行われたファシグティプトン・コールダー2歳セールにて43万5000ドルで購買されたホットディキシーシック(父ディキシーユニオン)。公開調教で1fでは最速となる10秒2の時計をマークした馬が、即戦力との期待にたがわぬパフォーマンスを見せていると言うわけだ。
レイバー・デイの7日にサラトガで行われたG1ホープフルS(7f)を制したのは、アフリートアレックスの初年度産駒になるダブリンだ。3歳春にプリークネスSとベルモントSの2冠を達成しているアフリートアレックスだが、実は非常に仕上がりの早かった馬で、ホープフルSは親子制覇達成となった。東海岸のこの世代には、8月20日のG2サラトガスペシャルを10馬身半差で圧勝したディーファニーボーン(父ディーワイルドキャット)という大物がいるのだが、両馬の直接対決が楽しみである。
同じく7日にデルマーで行われたG1デルマーフューチュリティ(7f)を制したのは、前走のG2ベストパルSに続く重賞連覇となったクッキンアットラッキー(父スマートストライク)だ。デビューから無敗の3連勝を飾ったこの馬が、まずは西海岸における2歳戦線のトップに躍り出たことは間違いなさそうだ。
同じ週末、アメリカ中部のアーリントンパークで2歳牝馬のG3アーリントンワシントンラッシーS(8f)も行われ、ダーレー供用種牡馬オフリーワイルドを父に持つシービーワイルド(牝2)が優勝を飾っている。5月30日のデビュー戦を7馬身1/4差、8月8日のトップフライトSを5馬身1/4差で制したのに続いて、ここも5馬身3/4差で快勝して3連勝を飾ったシービーワイルド。父オフリーワイルドは、3歳時にG3制覇、4歳時にG2制覇、そして5歳時にサバーバンHを勝ってG1初制覇を飾った、晩成タイプの競走馬であった。シービーワイルドに、父が持っていた成長力が備わっているとしたら、大変な大物に育つ可能性がある。
2歳馬による戦いは、言うまでもなく欧州でも進行中で、9月第1週目の週末にはフランスのロンシャンで、創設が1882年という伝統ある2歳戦ラロシェット賞(G3、1400m)が行われている。
今年の勝ち馬は、ダーレーの生産馬でゴドルフィン所属のバズワード(牡2歳、父ピヴォタル)。伯父にG3ガリニュールS勝ち馬イクサルテーションがいる同馬は、前走サンダウンのG3ソラリオSが2着、前々走グッドウッドのG2リッチモンドSが2着と、惜しい競馬が続いていた。初重賞制覇まで5戦を要した一方、デビューからここまで2着を外しておらず、5戦を消化して連対率100%という堅実味は特質モノだ。こういうタイプは、クラスが上がっても相手なりに走ってしまうことが多く、次走に予定される10月4日のG1ジャンリュックラガルデール賞でどんなパフォーマンスを見せるか、楽しみである。
日本ではデュランダル、アメリカではアフリートアレックスが、それぞれの地域におけるフレッシュマンサイアー戦線を現時点で一歩リードする形となったが、ヨーロッパで新種牡馬戦線のトップに立っているのが、キルダンガン・スタッドで供用されているシャマーダルである。
現役時代の戦績7戦6勝。仏国で、2000ギニーとダービーの2冠を達成しているだけでなく、英国のG1デューハーストSを制して欧州2歳チャンピオンとなっているシャマーダル。種牡馬としての期待は当然高く、2歳の早い時期から頭角を現す産駒も出てくることが予想されていたが、8月22日に英国のサンダウンで行われた7fのG3ソラリオSをシェークスピアリアン(牡2歳)が制して、産駒による重賞初制覇が早くも達成された。
さらに1週間後の8月30日、愛国のカラで6fのG3ラウンドタワーSが行われ、ダーレーの生産馬アークティック(牡2)が快勝。父にとって早くも2頭目の重賞勝ち馬となった。
7月2日のデビュー戦、5馬身で制した7月26日のLRグランジコンスタッドSに続いて、エイダン・オブライエン厩舎の期待馬エアチーフマーシャルに4馬身半の決定的な差をつけてラウンドタワーSを制し、デビューから無傷の3連勝を飾ったアークティック。大手ブックメーカーのラドブロークスは同馬を、来年の英2000ギニーへ向けた前売りで、オッズ17倍の5番人気に支持している(9月8日現在)。
そして9月第1週目、独国のバーデンバーデンで行われた1400mのG3ズクンフツレンネンでも、シャマーダル産駒のノーブルアルファ(牡2歳、母の父シングスピール)が2着に好走。デビュー3戦目にして初の重賞挑戦で健闘を見せたノーブルアルファも、今後がおおいに楽しみな1頭である。
日本同様、将来が楽しみな若駒が続々と出現している欧米の2歳戦線にも、ぜひご注目いただきたい。
(合田直弘)