バーナーディーニ初年度産駒に高評価

 7月9日付けのこのコラムでご紹介したバーナーディーニの初年度産駒たちが、8月10日・11日の両日にわたって開催された「ファシグティプトン・サラトガ・セレクテッド・イヤリングセール」で、期待にたがわぬ大ブレークを見せてくれた。今年のこのセールでは、価格が100万ドルを超えるミリオンホースが5頭誕生したのだが、このうち3頭がバーナーディーニの産駒だったのである。

 現役時代に見せた圧倒的能力、現役種牡馬の中で最も美しく力強いと賞される馬体、そして、種付けしている牝馬の質の高さなど、種牡馬として成功する要素を数多く保持するバーナーディーニだが、初年度産駒の出来も上々となると、将来のリーディングサイアー候補としての地位は、益々盤石のものになったと言えそうだ。

 初年度産駒に共通した特徴は、まず馬体のバランスが良いこと。そして、歩かすと実に柔らかく弾力ある動きを見せる点にあろう。さらに付け加えるなら、バーナーディーニ自身はダート専門に使われた馬だったが、産駒には素軽くて脚捌きの良い馬も多いことから、芝での活躍馬も多く出しておかしくはないという印象を持った。

 雄大な馬格を誇る父に比べると、馬体のボリュームという点でやや物足りない印象を与える馬も見受けられたが、1歳の段階で余りにも出来上がり過ぎた馬が多いよりは、今後の伸びしろがある馬が多い方が好ましいと、筆者は思う。例えば、ヨーロッパにおけるトップサイアー・ガリレオのように、1歳時にはむしろ華奢に見えた馬の方が走るという定説が出来ている馬もおり、成長曲線は個体によって様々であることも鑑みると、よほど極端な例を除けば、1歳時点におけるサイズはさほど気にする必要はないはずである。

 サラトガで見たバーナーディーニ産駒で、筆者が最も気に入ったのが、上場番号34番の母ストームビューティの牡馬。伯母にチャンピオン牝馬のゴールドビューティがいて、近親にもデイジュール、スカイビューティといった大物がいるファミリーを背景に持つ馬である。バーナーディーニ産駒らしく、バランスが良くて動きが柔らかく、かつ、丈夫そうな脚元をした馬であった。購買したのは、シェイク・モハメドの代理人のジョン・ファーガソン氏で、価格はセール4番目の高値となる120万ドルであった。

 ちなみにセール最高価格馬は、2日目に登場した上場番号204番の父ストームキャットの牡馬。G1エディーリードHやG1シューメーカーマイル等を制したアラゴーンの3/4弟に当たる馬で、価格は280万ドルであった。

 セール全体で2番目、牝馬としては最も高額の150万ドルで購買されたのが、上場番号88番。今年3歳の初年度産駒から、女傑レイチェルアレクサンドラをはじめ活躍馬が続々と出て、今季の種付けシーズン途中からダーレー・アメリカで供用されることになった、メダグリアドローを父に持つ牝馬である。 牡馬・牝馬とも、最高価格馬を購買したのは、シェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソン氏であった。

 ジョン・ファーガソン氏は、8月14日から17日までフランスのドーヴィルで開催された「アルカナ・オーガスト・イヤリングセール」でも、最高価格馬を購入している。氏が90万ユーロを投じて購買したのは、上場番号61番の牡馬。父がストームキャットで、ドバイワールドCや英インターナショナルSを制したエレクトロキューショニストを兄に持つ馬である。

 蛇足ながら、ファーガソン氏がセール2日目に30万ユーロで購買した、上場番号121番の父ピヴォタルの牝馬が、コンパクトながら力強い馬体を持ち、推進力のある歩様をした、筆者好みの馬であった。 

 サラトガやドーヴィルで見た若駒たちが、どんな競走馬に育っていくか、興味深くフォローして行きたいと思っている。

(合田直弘)